2011年2月25日金曜日

wilsonic works 11


2年以上前からずーっと関わってきたプロジェクトが、
ようやく形となって世に出ることになった。

4人組バンド、HOW MERRY MARRY
3月2日リリースのデビュー・ミニアルバム『バイ マイ タウン』
僕はこの作品の、トータルの共同プロデュース、
ディレクションをしています。

新人アーティストのデビューに関わる、というのは
実は結構久しぶりで、前回のエントリでも書いた
クノシンジの『ポータブルポップミュージック』以来、か。
実に4年ぶり。

HOW MERRY MARRY(以下、HMM)は、
かつては違う名前で活動をしていたが、
メンバー・チェンジをし、バンド名も変更。
それが2008年の暮れで、
そのタイミングで僕も関わるようになった。

彼らの強みは、この時代のバンドにあって
キャラクターや雰囲気などに頼らない、純粋に音楽的なところ。
親しみやすくフックの強い「メロディ」と、
広いレンジを誇る説得力のある「歌声」。

これを最大限に活かすプロダクションを目指し、
2年前からメンバーと一緒に試行錯誤しながら
作り続けてきた集大成第一弾。
いやはや、ようやくのリリースです。

HOW MERRY MARRY
debut mini albun 『バイ マイ タウン』
2011年3月2日発売
エピックレコードジャパン

1. バイ マイ タウン
2. 少年
3. さよならレター
4. ノーザンライツ
5. みのり

タイトル曲のプロデュースは松岡モトキ
今回初めてご一緒したんですが、
ずーっとなんか一緒にやりたいと思っていた人。
話してみれば同い歳のジョン・ブライオン好き。
非常に楽しい現場&プロフェッショナルな出来上がりに感謝です!
Mixは小田和正さんの作品等で知られる三上義英。

2曲目以降、関わってくれたプロデューサーは、
エンジニアは工藤雅史、松田龍太柏井日向
錚々たるメンツです。

曲ごとにその曲の良さを最大限に引き出すよう、
スタッフを変えてレコーディングを行う、という
非常に効率の悪いやり方。
これを認めていただいたマネージメント及び
レコード会社の皆さまに、改めてお礼を申し上げます。
おかげさまで、こんなにクオリティの高い作品に
なりました(自画自賛)。

また、こちらの特設ページでご覧いただきたいのですが、
パッケージのアートワークはCENTRAL67
ちらりと観ることのできるミュージック・ヴィデオの監督は、
ジャケットでメンバーが配置されているペーパークラフトの
「街」は、メンバー4人が手分けをして作りました。

多くの素晴らしいスタッフと共に音源やアートワーク作りを
進めてきたHMM、ようやく第一歩を踏み出します。

おかげさまで評判も上々、3月に入ったら多くのFM曲で
ブンブン回していただけるみたいな噂もチラホラ(笑)。

ということで、新人バンドHOW MERRY MARRY、
HPをチェックいただければ、ブログやらラジオやら、
ツイッターやら、いろんな情報があります。

取り急ぎ、名前だけでも覚えていただけたら、と。
ひとつ、よろしくお願いします。


p.s.
しかしねー、藤井理央ちゃんなんて、スピッツの
『Crispy!』の頃からのお付き合いというか、
お仕事するのはそれ以来17年ぶり!?
思えば、スピッツのツアーにおける初代サポート・
キーボーディストが理央ちゃんでした。
今やコブクロや平原綾香などで売れっ子の彼ですが、
あの頃と変わらず無邪気で穏やかで音楽が大好きな
彼と、久しぶりに仕事が出来て嬉しかった。

長くやっていると、こんな実りある再会が
あったりするから嬉しい。





2011年2月20日日曜日

wilsonic works 10


2ヶ月ぶりの更新ではありますが、
何事もなかったように淡々と。
でも、長いよ。


僕のTwitterのタイムラインでもちょくちょく話題になっている、

このアルバムに僕は、今回面白い関わり方をした。

ある日、別件で仕事を一緒にしていたアレンジャー、プロデューサー
であり変態ギタリストでもある石崎光君(以下、ヒカル君)から、
「竹内さんってライナーノーツとか書いたりするんですか?」
と尋ねられた。

僕はいくつかの再発CDのライナーを、別の名前で数年前に
書いたことがあるので、正直にその話をしておいた。

しばらくするとまたヒカル君から、
「実は今作っているタニザワトモフミのアルバムのライナー
を書いてほしいんですよ」
と切り出される。

正直、再発ではなく現役バリバリのアーティストの新譜に
文章を寄せる、ということにいささか抵抗はあったのだが、
これもフリーランスとしての新たな展開か?と前向きに
とらえ、まずは音を聴かせてもらうことにした。

それまでの経緯を少し時間を遡ろう。

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レコーディングで初めて会った。
その後、クノ君の重要な音楽的パートナーとしていくつかの
楽曲でプロデュースをお願いなどしていた。

音楽家としての手腕や考え方取り組み方が素晴らしいのはもちろん、
お互いの好物な音楽が近いこともあり、いろいろ情報交換しあったり、
時折ツイッターで絡み合うような関係であった。

そしてこのエントリにもあるように、高杉さと美さんの
レコーディングで石崎アレンジ、クノ作曲のときに作詞を誰にしよう、
という話になったとき、ヒカル君から推薦されたのがタニザワ君。
この時が僕とタニザワ君との初顔合わせ。
電話やらメールやらで詞に関するやり取りをしているとき、
彼のハンパじゃない反射神経やらちょっとおかしな視点などに
気づかされていたのでした。

加えて、今回のタニザワ2ndのエンジニアは、前述の高杉さと美
のときにもご一緒した若き天才、molmolこと佐藤宏明
このトライアングルで作られた作品が面白くないわけないのだ。

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というような意味でタニザワ2nd、普通に楽しみにして
いたんだけど、まだ制作途中の音を聴かせてもらって、
僕は色めき立つわけですよ。

コレハタダゴトデハナイ。

飛び出してくる音や言葉が、とにかく新鮮。
普段日本の音楽に接していてあまり触れることがない感触
や質感に、僕はすっかりビックリした。
これ、あのタニザワくん?

そのすぐ後、ミーティングで久しぶりに会ったタニザワくんは、
作っている音楽に手ごたえを感じている人特有の鼻息と、
想っていることを言葉にするタイムラグに対するもどかしさ
両方を放ちながら、僕にいろいろ語ってくれた。

僕はライナーノーツ執筆を二つ返事で快諾し、完成する
音源を楽しみにしていた。

そしたらマスタリング1週間前くらいのある日、またもや
ヒカル君から電話あり。
「タケウチさん、タニーのアルバムの曲順考えてもらえません?」

商売柄、自分がプロデュースやディレクションに関わった
アルバムの曲順を考えたり(アーティストが考えたものを
修正したり)、曲やアルバムのタイトルを考えたりすることは
常だけど、自分がレコーディングに全く関わっていない
作品の曲順を考えるなんて初体験。
多くの同業者も、こんな経験そうそうないと思う。

今までやったことがないっていうことは絶対に楽しそうだと思い、
「わかった。考えてみる」と返事。
引き受けてはみたもののこれがまた予想以上に大変で。

まずは一緒にレコーディングした者ではないなりの視点で
各曲の構造、成り立ち、意味合いなどを自分なりに把握
する作業から。
これをじっくりやっているうちに、この作品がとんでもない
密度で出来ていることにさらに気づくんですけどね。

だからこそ、その密度が間違いなく伝わるような、且つ
暑苦しくなくあくまでもポップに伝わるような曲順を、僕なりに
考えてマスタリング2日前に提出しました。

結果、元々タニザワ君やスタッフが考えていた曲順とは
似ても似つかぬオーダーだったようだが、1ヶ所を除き
タケウチ案が採用された、とのこと。
いやはや、ホントにいいんですか???

そしてその音源を聴きながら、ご依頼のライナーを執筆
するんですが、これがねー、すっごい楽しかった。

僕は売文を生業にしていない。
ブログにしてもツイッターにしても、自分の好きな音楽を
自分が感じたことをなるべく正確に伝えるよう、文章に
変換しているだけだ。

それと同じことを今回やっただけなので、非常に楽だった。

もし僕と何の関係もなくこの作品が世に出て、たまたま僕が
それを知り、ブログに書いたらこんな文章になるのでは?
そんな感じ。

そして、
あの、
我ながら、
すごく良い文章ですよ(照)。

もちろん、タニザワ、ヒカル、佐藤君をはじめとした皆さんが
寄ってたかって作った音楽が素晴らしいからこそ、僕も
僕自身が楽しめる文章を書けたのは、云うまでもない。
なんか、アルバムにはVery Special Thanksとかクレジットされちゃって、
こんな名盤に面白い形で関わることができて大変光栄です!

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タニザワトモフミ、2ndアルバム
『日本に落ちてきた男』
2011年2月23日発売

お値段ナント、2,000円ポッキリ!(12曲入りフルですよ)

今ならここでアルバム全曲試聴も可能(2/22まで)。
収録曲「爽風」のMV視聴はこちら
タニザワくんのナタリーのインタヴューも併せてどーぞ!

今回、僕が書いたライナーからの抜粋でタスキコピーを
バップのディレクター踊さん(僕はオードリーと読んでるけどね)
が作ってくれました。曰く、

「2011年、日本のポップスのスタンダードはここまで引き上げられた」

ですよ。まずここ、超えないとね、ここからは。
提示したからね、タニザワは。

でね、まずミュージシャンとかプロデューサーとか、同業の人たち
から賞賛されてる、ってのが頼もしい。
これがクリティックやラジオ・ディレクター、お店のバイヤーに広がり、
多くの音楽ファンに届いてほしい。

そうだ。最初にタニザワくんとこのアルバムについて話した
とき、僕が彼に云ったのは、
「要するに、『君にも届け』ってことだよね」とかいうダジャレでした。
お粗末。でも、届け、「君」にも。


p.s. これに味をしめたタケウチは、プロの「曲順考案者」としても
活動していく所存です。
アルバム等の曲順で迷宮に入ったりしたら、竹内までお気軽に
お声掛けください(笑)。