2011年3月2日水曜日

wilsonic works 12: Vinyl


アナログ盤について少し。

僕はアナログ・レコードのコレクターではない。
ちゃんと数えたことはないけど、おそらく7インチで1,500枚程度、
12インチも1,000枚程度あるかないか、じゃないかな?

働いてお金が少し自由に遣えるようになってから少ししたら
世の中はCDの時代になっていた。
それ以降は基本的にCDで買えるものはCDを選んでいた。
ちなみに今、CDはなんだかんだで20,000枚くらいあると思う。

コレクターではないから、オリジナルにこだわりもしない。
オーディオ・マニアでもないんで、状態も気にしないし
「やっぱアナログに勝るものはないねー」とも思わない。
そんな人間ですが、愛着はそれなりにあって。

個人的には7インチ(17cm)盤が好きで、未だに
UKインディとかの7インチは新譜として購入したりする。
存在自体も可愛いんだけど、シングルのA面の、
「この1曲にヒットを賭ける」という心意気が大好き。

お金のない80年代前半は中古レコード屋で
50円とか100円くらいの7インチ盤を漁っていた。
安いこともあって、当時の僕は日本の男性アイドルの
シングル盤をいっぱい買った。
女性アイドルは安くても300円くらいしたから。
同じ金額で男性アイドルは3倍以上買えた。
それらの作品で作詞作曲家やアレンジャー、レコード会社の傾向
なんかをいろいろインプットしていたんだな。

僕がレコード会社にもぐり込んだ1989年、もはやロック、ポップス系の
音楽はほぼCDに移行しており、アナログのプレスを止めていた。
前述のように僕も滅多にアナログ盤を買わなくなっていた。
アシスタントとしてついていたパール兄弟の『TOYVOX』が、
多分パール兄弟にとって最後のアナログになるだろう、
とのことでカッティングに同行させてもらったのは懐かしい思い出。

その翌年、僕はプロモーション・オンリーの
7インチを作(らせてもら)った。
モノは、遠藤賢司「エンケンのミッチー音頭」。

これ、市販されたのはCDシングル(短冊仕様)だけだったんだけど、
勝手に盛り上がってプロモ・オンリーのアナログを作ってしまった。
ジャケットもオリジナル・アートワークだし、カップリングには
オリジナル・シンガー、青山ミチのヴァージョンを収録するという
スペシャルなブツ。
こんなこと、新米ディレクターにほぼ勝手にやらせてくれていた、
そんな自由な時代のお話(遠い目)。

でまあ、隙あらばアナログを出したいなー、なんてことを
常に思って虎視眈眈と機を窺っていたところに、
スピッツのヒットが訪れるわけです。
スピッツも当然世代としてアナログ育ち、スタッフも
同年代かそれ以上、ということでスピッツ作品を
アナログでリリースする機運が盛り上がった。

まず手始めに7インチで"SPITZ GOLDEN HIT SERIES”
と銘打って、「ロビンソン c/w 涙がキラリ☆」を1995年に
リリース。往年の「コンパクト盤」みたいな雰囲気を
出したかったんですが、伝わったかどうか・・・。

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ちなみに、いろいろ混同が多いので改めて説明して
おきますね、アナログ盤の呼び方について。

まず、「LP」というのは「Long Play」の略で「アルバム」とほぼ同義。
なので「LP」自体はアナログを指す用語ではない。
CDのアルバムだって、LP。
「LPを、CDとVinylとMP3で販売する」という云い方が成り立つわけです。

また、「EP」というのはExtended Playの略。何に対して
エクステンドしているかというと、「シングル盤」に対して。
よく、シングル盤とEPを同じものとしている記述がありますが、
それは本来間違いです。

アナログ時代の定義は、以下の通り。

シングル盤→片面1曲入り
EP→片面複数曲入り

17cmか30cmかはこの言葉だけでは区別はないけど、
60年代のUKではEPは45回転片面2曲入り系4曲、
というのが結構あった。

これに対して「コンパクト盤」というのが60~70年代の日本に
ありまして、これはヒット曲4曲を片面2曲ずつ収めた
17cm33回転のディスク。

ま、CD時代となってシングルもEPも実質上同じになって
しまったんで今となっては関係ないことですが。

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閑話休題。

前述のスピッツGOLDEN HIT SERIESは、
95年から3年連続で計3枚リリース。

その3年目の97年には遂にオリジナル・アルバムの
アナログ化をスタートさせる。

1997年1月1日から7ヶ月連続でゾロ目の日に発売。
最新アルバム『インディゴ地平線』から遡ってのリリース。
各アルバムのイメージに合うカラー・ヴァイナル仕様、
毎回書き下ろしの漫画 or イラスト封入。CDとは違う曲順。
全7枚購入するとミニ・アルバム『オーロラになれなかった人のために』
の10インチ盤(非売品)がもらえる、というもの。

なんか、当時結構忙しかったのに俺、頑張ってんなー(笑)。

当時、カラー・レコードだっていうことでカッティング・エンジニア
世界の小鐡さんは残念がっていた。
そう、黒盤に比べて、カラーやピクチャー・レコードは音が悪い。
また、ほとんどのアルバムが片面20分以上の収録になっていた
ので、内周の曲が損をしていたのも今思うと残念。

その後もオリジナル・アルバムを出す毎にいろいろ改善しつつ
ここまで進めてきたんですが、この3月にようやくリリースとなる
13thアルバム『とげまる』のヴァイナルは、決定版かもしれない。

実は、これまでのスピッツのアナログ盤は、いろんな事情も
あってCDマスターと同じ音源を使用してきた。
つまり、Stephen Marcussenがマスタリングした音を、
小鐡さんがカッティングという手法。
それを今回、Stephenの音ではなく、高山徹さんがTDした
マスターから直で小鐡さんがカッティングする、という
工程にしてみた。

96kHz 24bitのデータからのカッティング、しかも
JVCマスタリングセンターが小安から中央林間に移転し、
遂に小鐡ルームにマスタリング・システムと
カッティング・マシンが同居、という素晴らしい環境!
加えて2枚組16曲、1面4曲で平均16分という、
カッティング的には理想的なサイズ!!

まだテスト・プレスは上がってきていないけど、
正直今回の音は今までより相当良いと思います。
乞うご期待。

また、アートワークはCDとは別テイクの写真を使用したり、
いつも通りCENTRAL67は遊び心加えてくれています。

恒例の封入マンガは、僕も大好きな大橋裕之さん。
音楽と漫画が好きなら、彼の『音楽と漫画』はぜひ一度
体験して損は無いと思われます。

といったわけで、以下、
スピッツ、13thアルバム『とげまる』の2枚組アナログ盤の
入手方法等のお知らせです。

昨日から予約受付始まっています。
このUNIVERSAL MUSIC STORE及び、
3月27日からスタートする
SPITZ JAMBOREE TOUR "とげまる2011"、
SPITZ JAMBOREE TOUR 2011"とげまリーナ"の
会場でしか入手することができません。
一般店頭での発売はいたしません。

ユニバーサルのサイトでの発売(発送開始)は3月30日ですが、
基本アナログは限定プレスで、よほどのことがない限り再プレスは
しませんので、確実に入手したい方は早めのご予約をお勧めします。

p.s.
最近、アナログのプレイヤーが壊れたので、新しいのを
購入したんだけど、ちょっと便利かなと思って、
直でUSBメモリに録音できる機種にしたんですよ。
でも、なんか結構煩雑だし、データへの変換方法は
デフォルトの1種類しかないし、かなりがっかりしています。
近々、フツーのプレイヤーを購入するような予感・・・。