2012年12月9日日曜日

wilsonic works 27


3週にわたり4作品がリリースされる "タケウチ冬の盤祭り"
の掉尾を飾るは、これがメジャー・デビュー作品となる、
SAKANAMON『na』
収録されている10曲のうち、9曲をプロデュースした。

今回、アルバム発売に合わせてタワーレコードで配布されている
フライヤー用に、タワレコのバイヤーさんやラジオDJ、編集者等に
混じって僕もコメントを寄せている。
その文章をここに転載してみる。

多くのヒラメキとちりばめられた仕掛け。
エモーションと緻密さの同居。
どんなに難解な言葉を使っても人懐こい表情の曲たち。
SAKANAMONの音楽は、一種の「発明」だと思う。

ここにあるいくつかのタームは、僕が音楽に対するに
当たり、非常に大切にしているものばかり。

まず、「ヒラメキ」と「仕掛け」について。

前者は曲を作り、アレンジし、演奏し歌唱するときの、
とっかかりとなるもの。
後者は曲を興味深く聴かせるための手段。
前者が右脳的なるもので、後者が左脳的、という云い方も出来る。

そして、この「ヒラメキ」こそが「発明」なのだ。

音楽は、発明。
発明しなきゃ音楽じゃない。

今回、たまたまSAKANAMONに向けて「発明」という
言葉を使ったけど、多くの優秀なミュージシャンは、
多かれ少なかれ発明し続けているものだ。
そして、発明しなくなるとその音楽は輝きを失う。

僕ら裏方は、そういう発明の才が無いから裏方をやっているのだ(笑)。

ミュージシャンが小さな発明をしたのを見逃さず、
それを商業品として世に送り出すための「仕掛け」
などを考えて、アシストをする。
それが僕の仕事。

SAKANAMONのシンガーであり、ソングライターである
藤森元生の「ヒラメキ」は、時に天才的だ。
どこからそんな着想を得るのかさっぱりわからないが、
やけに気になるモチーフや言葉を持ってくる。

最大公約数のような音楽の氾濫が、現在の音楽販売不振の
一端を担ったと思っている僕は、こういう「はみ出した」才能が
面白くてしょうがない。


次。「人懐こい表情の曲」って何だ?

これも最近ようやく気付いたんだが、僕はどうやら
シリアス(っぽい)曲やアーティストが苦手みたい。
シリアス過ぎて笑えるくらいだったらまだいいんだけど
(今年1回だけそういうアーティストをライヴハウスで
観て、周りの人が熱心に聴いている中、僕は笑いを
堪えるのに必死だったw)。

シリアス(っぽい)音楽は、とにかく窮屈。

なんていうか、解釈の自由度が低いのが苦手で。
曲を聴いて、「俺はこう思う」「私はこう感じた」と、
受け取る側によっていろんな解釈が出来る音楽が好きだ。
あと、同じ曲なのに聴く度に違う感情を揺さぶられる、
とかもうそういうの最高の音楽だと思う。

聴いただけではもちろん、歌詞カードを見ても意味が
わかりにくい歌詞のSAKANAMONの音楽は、難しい言葉を
単に難しく響かせようとしてはいない。
韻を踏んだりする言葉遊びや様々なアレンジの方法で、
歌詞自体の意味ではなく、イメージを植え付ける。
時に開放的に、時に攻撃的に、時に情けなく。

歌声のバランス&ヴァリエイションも重要。
時に無機質、時にエモーショナル、時にアホらしく。

そういった工夫や組み合わせ、加えて藤森元生の持つ
天然成分(笑)の結果、SAKANAMONの音楽は
とても「人懐こく」僕の耳に忍び寄ってくる。

実はこの「天然成分」がいちばん重要だったりするんだけどね。
やってる本人が面白がっていれば、自ずと曲に表情は生まれる。


『na』は、5日に発売されて、売れ行きも順調だと聞く。
きっと彼らの音楽は、それ自身が持つ人懐こさで、
多くの人の生活の「肴」となっていくことだろう。

ということで、アルバム『na』の1曲目を飾る、とびきり
キャッチーでいて、最後に「そのオチかい!」とツッコミを
入れたくなる曲「マジックアワー」のMV&メイキング映像は
こちら

前作ミニアルバム『泡沫ノンフィクション』にも『na』にも
収録されている「カタハマリズム」のMVはこちら

そして、アルバム『na』収録曲で唯一僕が関わっていない
曲「ミュージックプランクトン」のMVはこちら

エンジニアも違うので一概には云えないけど、
「ミュージックプランクトン」と「カタハマリズム」を
聴き比べると、竹内がどういうスタンスで音に
向き合っているか、少しわかっていただけるはず。
ま、同業者向けのお話かもしれませんが。
特にヴォーカルの質感に顕著に出ていますね。
YouTubeではなく、CDで聴くとさらにわかるはず。


p.s.
今年に入ってからのSAKANAMONは、観る度に
ライヴ・パフォーマンスの完成度が上がってきている。
音源を聴いて興味を持たれた方は、是非とも一度、
ライヴをご覧いただきたい。
また、以前観たことがある方も、是非最新の彼らの
ステージをご覧になってほしい。
ライヴ情報はこちらを参照ください。