2016年10月20日木曜日

wilsonic works 71


モノブライトのキャリア初となるセルフ・カヴァー・アルバム『VerSus』
10月12日にリリースされた。
今年4月のアルバム『Bright Ground Music』に続き、ディレクター及び
共同プロデュースで関わった。

デビューから10年という節目に、彼らがこれまで発表してきた楽曲が、
ライヴを経てどんな進化をしてきたか、を記録することを基本に
スタートしたこの企画。
僕は、カヴァーされた楽曲のオリジナル・レコーディングに立ち会っていない、
という自分の立場、立ち位置を逆手に取り、新鮮な耳で楽曲を聴き、
新しいアレンジの提言などさせてもらった。

オリジナルの枠組みを壊すことなく、そこに最新型のモノブライトを注入した、
現在の彼らの勢いとスキルが反映されたアルバムになっている。
収録曲「DANCING BABE」のMVはこちら

レコーディング・メンバーはドラムスにケンスケアオキ(SISTER JET)、
キーボードに村上奈津子(WONDERVER)という、最近のライヴでも
お馴染みの2人と、モノブライトの3人。

この5人によるレコ発ツアーが本日20日からスタートする。
題して “Bright VerSus Tour” 。
その名の通り、全国5箇所を対バン形式で回るという趣向。
詳細はこちらを参照のほど。

実は音楽制作に携わって今年で27年目にもなるが、こういった
セルフ・カヴァー・アルバムに関わったのは今回が初めて。

平沢進さんやスピッツで、単曲のリ・レコーディングなどはあったけど。

ここ最近日本ではちょっとセルフ・カヴァーが流行しているのかな。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのこれとか、175Rのこれとか。

アーティストによってセルフ・カヴァーに向かう動機や理由は様々だろう。
リリースから年月を経て、初出のときとは違うアプローチがしたい、とか、
技術やテクノロジーが進化した故に今ならこんなことが出来る、とか、
単純にオリジナル・ヴァージョンに不満があった、とか。

そして、受け取るファンも反応はそれぞれだと思う。
オリジナルがいちばん好き!という人もいれば、
新しく生まれ変わった音にワクワクさせられることもある。

以下、ちょっと個人的なことも含めて。

この種のいわゆるセルフ・カヴァーもので、僕の人生の中で
いちばん多く聴いたアルバムは、恐らく大滝詠一『DEBUT』(1978年)。
僕は、ここに収録された曲のいくつかに、オリジナル以上の輝きを見出した。

ちなみに。
便宜上このブログでもその言葉を使っているけど、
“セルフ・カヴァー” という用語は、日本でのみ通じる和製英語というか和製ターム。
しかも、本来はソングライターとして他人に提供した曲を作家本人がレコーディング
することを “セルフ・カヴァー” と呼んだのが始まりではなかったか。

今年リリースされて大きな話題となった大滝詠一の『DEBUT AGAIN』は、
その、本来日本で「セルフ・カヴァー」と呼ばれたものを集めた作品集。
ラッツ&スターや松田聖子、小泉今日子らに提供した楽曲の、
大滝本人による歌唱を収録している。

いろいろ胸に去来するものがあって、このアルバムは3月のリリース以来、
まだ1回しか聴いていない。

2016年10月8日土曜日

wilsonic works 70



前エントリからの続き。

今週は、10月5日に初の全国流通盤『omoide fight club』をリリースした、
ベランパレードとの経緯を。

プププランドを初めて観たのと同じ2014年のこと。
10月10日に新宿JAMのイヴェントを観に行くと、
宮崎から来たというこのバンドが出ていて、
やる曲やる曲みんなキャッチーなんで、ちょっとびっくりしながらライヴを観ていた。

1コーラス聴いたら、2番からは一緒にシンガロング出来る、
それくらい強烈に印象深いメロディと言葉。
そして自分たちの音楽を100%伝えようとする熱いパフォーマンス。

終演後手売りのCD-Rを購入した。
音源で改めて聴いても、曲の強さに恐れ入る。

地元が宮崎なので東京でのライヴは少なく、
その後観る機会がなかなか無かった。

年が明けて2015年の上旬、ライヴハウスでよく顔を合わせる
LUCKYHELLのスタッフと雑談していて、最近気になるバンドの
ことを話していたら、彼の口からベランパレードの名前が!
「去年観てすげーいいと思っていたんですよ!」と伝えると、
彼もびっくり。

その後、バンドが東京にライヴに来た際に挨拶したり、
少しずつ距離が縮まり、そうこうするうちにLUCKYHELLが
ベランパレードのアルバムをリリースすることになった。
件のスタッフから僕にお声がかかり、レコーディングを
お手伝いすることになった、という流れだ。

ベランパレードのアルバムでは、事前に準備する時間が結構あったのと、
トータルにプロデュースというオファーだったので、曲選び、
アレンジのチェックなど、初期段階からコミットした。

多くの曲はこれまでライヴで何回も演奏されていたものだが、
レコーディングするに当たり、改めてアレンジや言葉の載せ方などを
確認したり、あいまいだったところをクリアにしたり。

彼らにとって初めてのちゃんとしたレコーディング、しかも東京。
そしてなんかよくわからないけどプロデューサーとかいう人がいて、
あれこれと質問されたり、「こうしたら?」なんて提案される、という環境。
不安だったと思いますよ。
どこまで信用していいんだか、わからんもの。
僕が彼らの立場だったら、いろいろ疑ってかかる。

でもメンバーのみんなは、僕の言うことを真摯に受け止めて、
一生懸命頑張ってくれた。
結果、ベランパレードが今提示出来る最高のものが出来たと思う。
曲目も、ベスト・オブ・ベランパレードだしね。
全曲、抱きしめたくなるような曲ばかり。
ライヴでは全員参加の超アンセム、「ナイトウォーリー」のMVはこちら

レコーディングは普段からよく使用している祐天寺のSTUDIO MECH
エンジニアはこのスタジオ出身の英保雅裕さん。
彼の丁寧で適切なアドヴァイスが、どれだけ助けになったことか。
お世話になりました!

ということで、2014年に初めてライヴを観た2バンドと、
今年になって関わることになり、2週続けてリリースされて、
しかもお店によってはこんなふうに一緒に展開してもらえる、
そんなマジカルな経緯を2回にわたってお送りしました。
※写真はタワーレコード新宿店8F






























p.s.
それにしても、2014年はたくさんのライヴを観て、
自分にとって多くの重要なバンドに出会ったもんだ。
プププランド、ベランパレードでしょ、みるきーうぇいハラフロムヘル・・・。
このエントリを読むと、どうやら2014年が自分史上いちばん多くの
アーティストのライヴを観た年のようだ。
そして、今後これを更新することはおそらく無いだろう。

p.s. 2
そういえばプププランドもベランパレードも、僕が初めてライヴを
観たときからメンバーがひとり替わっていて、レコーディングでは
今回のアルバムが初参加、というのも共通していることに気がついた。
ただそれだけですけど。

p.s. 3
実は来週10月12日にも竹内が関わったアルバムがリリースされます。
See you sooooon!

2016年10月2日日曜日

wilsonic works 69


今週来週と、2週続けて自分が関わったアルバムがリリースされる。

9月28日に発売となった、プププランド『Wake Up & The Light My Fire』
10月5日に発売となる、ベランパレード『omoide fight club』

この2つのバンド、元々僕がライヴで見かけて気になっていて、
つまり僕自身がそのバンドのファンとなったことがきっかけで、
今回仕事としてご一緒出来た、という経緯が似ているのだ。
その辺のことをブログに、と。

まず、今回のエントリではプププランドに関して。

神戸在住のこのバンドのことを知ったのは、メモによると
2014年の6月10日、渋谷LUSHでのイヴェント、Beat Happening!にて。
軽く衝撃を受けた。

このときから既に出囃子がよしだたくろう(吉田拓郎)の「結婚しようよ」
だったかどうかはもう覚えていない。多分そうだったはず。なんだそのセンス。

「ミスター・ムーンライト」というタイトルの曲は、ビートルズ・オマージュかと
思いきや、歌詞は平尾昌章「星はなんでも知っている」を下敷きにしていたり、
フォークロック的な佇まいで「おっぱい」というタイトルの曲を演奏するという、
某バンドのアマチュア時代のステージを彷彿させる場面があったり、
かたやチャック・ベリー直系のロックンロール・ナンバーあり、
いやはや個人的に興味をそそられる要素満載で、一気に気になるバンドとなった。

その日は会場限定のCD『BOYS IN THE BAND』を購入して帰宅。
その音源を繰り返し聴いた。

翌7月に大阪のサーキット・イヴェント『見放題 2014』でもライヴを観て、
すっかりこのバンドのファンになってしまった。
その後、東京でのライヴなどを何回か観るうち、自分の中で確信した。

「このバンド、俺と一緒にレコーディングしたらきっともっと良くなるはず」

いやあの、妄想ですよ、完全に。
でも確信しちゃったんで、彼らが所属するエキセントリック・レコーズの
はいからさんにアポ取って会いに行った。
関西と東京を忙しく往復する中、わざわざお時間を割いてもらった。
僕はときどき、いても経ってもいられなくなってこういう行動を取ることがある。

peridotsがレコード会社ともマネージメントとも契約を終了した、
という話を聞いたとき、なんでもいいから協力したい、と思い、
伝を辿って本人と話をした。そのことも含めた、僕とperidotsの
これまでのことを書いたエントリはこちら

初めてandymoriの音源を聴いて、うわーすげー才能出てきちゃった、と思い、
プロデューサーであるYouth Recordsの庄司さんの連絡先を調べ、
いきなり会いに行き、いかにandymoriが素晴らしいかを
一方的にまくしたててしまったこともある。

peridotsとはそれから数年後に一緒に仕事をすることになった。
andymoriとは特に何もないまま、彼らは解散してしまった。

プププランドとは、嬉しいことに今回のアルバムのタイミングで
一緒にレコーディング出来ることになった。

アルバム・トータルのディレクターやプロデュースではなく、
収録曲の半分くらいのヴォーカル・ディレクション、
数曲のコーラス・ディレクションをお手伝いした形。

彼らのレコーディングは、とにかくみんな楽しそうなのが素晴らしい。
前向きにいろんなことを試し、みんなが遠慮せずに発言する。
今回から新たに加入した谷くんのアプローチも、レコーディングを
活性化させた要因のひとつだったのだろう。
これまで自分たちだけでレコーディングしてきたノウハウもあり、
判断が早く、サクサク進むレコーディングにすっかり感心した。

そういう中僕は、少し時間をかけてじっくりやることの効能、
みたいなものを提示してみたつもり。具体的にここには書かないけど。
多分、それなりに届いたはず。

アルバムのレコーディングは下北沢のhmc studioで行った。
LOST IN TIMEのレコーディングでスタジオを使用したことは
あったのだが、エンジニアの池田洋さんとは初のお手合わせ。
ドラムテックで参加の佐藤謙介さん含めて、新しい出会いに感謝。

そんなわけで、プププランド1年10ヶ月ぶりのフル・アルバム、
『Wake Up & The Light My Fire』は、狂熱のダンス・ナンバー、
叙情的なカントリー・ソング、トロピカルなサマー・チューン、
ヘヴィなギターが炸裂するオルタナ・ロックなどなど含む全9曲収録。
ヴァラエティに富みながらも、人懐こいメロディと
つい口ずさみたくなる印象的な歌詞が次々と繰り出される充実盤。

アルバムのオープニングを飾る「MUSIC」(なんとも堂々たるタイトル!)
のMVはこちら

アルバム制作の経緯などを語り、僕のことにも少し
言及してくれているインタヴューはこちら

10月1日の神戸からリリースツアーもスタート。
インストア含め、全国を回るので、ライヴもぜひとも。
スケジュールはこちらでチェックのほどを。

ということで秋の竹内祭、第1弾プププランドでした。
次週はペランパレードです。
See you soon.